個人情報保護制度では目的外利用の制限が規定されている

個人情報保護制度では目的外利用の制限が規定されている

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個人情報保護制度では目的外利用の制限が規定されている

( 目的外利用の制限)
実施機関は、保有個人情報に係る業務の目的の範囲を超えて当該保有個人情報の利用 をするときは、本人の同意を得なければなりません。
ただし、次に掲げる場合においては、本人の同意を得ないで、目的外利用をすることができます。
( 1 ) 法令等に定めがあるとき。
( 2 ) 住民の生命又は財産に対する危険を避けるため、緊急かつやむを得ないとき。
( 3 ) 当該保有個人情報が、出版、報道等により公にされているとき。
( 4 ) 住民の福祉の向上を図るため、法令等及びそれらに準ずる規程の定めに基づき適正に業務を執行するとき。
( 5 ) 審査会の意見を聴いて、実施機関が特に必要と認めたとき。
実施機関は、目的外利用をしたときは、規則で定める事項を記録し、住民の閲覧に供さなければなりません。

 

【説明】
1 保有個人情報は、個別の業務ごとに収集し、収集した個人情報は、条例により登録した業務の範囲内で利用することが原則です。しかし、この原則どおりに事務を進めると、業務ごとに同一の個人から同じ情報を何度も収集することになり、業務の効率性や住民の負担増の観点から、住民サービスの支障となる場合があります。
そこで、一定の制限の範囲内で、業務の目的の範囲を超えて保有個人情報の利用ができるものとします。このような、自治体の実施機関内部での業務の目的の範囲を超えた保有個人情報の利用を「目的外利用」といいます。
(1 ) 同一業務内での他の帳票等からの利用は、本人外収集や目的外利用には当たりません。
(2 ) 住の実施機関内部の、異なる業務間での利用が目的外利用であり、例えば、A 課のa 業務の保有個人情報を同一課のb 業務に利用したり、A課のa 業務をC 課のc 業務に利用したりすることなどをいいます。

 

2 住民基本台帳は、住民基本台帳法( 昭和42年法律第81号) 第1 条によると、「住民に関する事務の処理の基礎とする」ことを目的とするものであり、これを実施機関内部で利用することは、法の目的の範囲内と考えられるため、目的外利用には該当しません。

 

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例えば、成人式への招待者名簿として、住民基本台帳から新成人リストを作成することは、法の目的内の利用となります。しかし、このリストは、住民基本台帳そのものではないため、これを他課の業務に利用することは、目的外利用に該当します。
ただし、目的の範囲内として利用できるものは、住民基本台帳法第11条により閲覧を求めることができる情報( 氏名、出生の年月日、男女の別、住所) であり、その他の記載事項までを利用することはできません。

 

3 目的外利用をするときは、本人の同意を得ることを原則とします。
本人の同意は、目的外利用をすることについて、本人から文書又は口頭により、同意する旨の明確な意思表示がなされた場合をいいます。本人の同意は、目的外利用をしようとする課又は目的外利用を認める課( 個人情報の保有課) のいずれで得ても構いません。業務の内容や保有個人情報の性質により両課の協議によって事前に決めます。

 

4( 1 )目的外利用をするときは、本人の同意を得ることが原則ですが、法令で目的外に保有個人情報を利用できることが定められている場合又は緊急事態で、目的外利用について、本人の同意を得る時間的余裕がない場合などが考えられます。このようなことから、本項では、例外的に本人の同意を得ないで、目的外利用ができる場合を定めています。
「法令等に定めがあるとき」とは、収集目的を超えての利用について、「する」「できる」等の定めがあるときをいいます。

 

(2)例 通知、通報等の義務規定
公職選挙法第29条第1 項(通報及び調査の請求)
市町村長及び市町村の選挙管理委員会は、選挙人の住所の有無その他選挙資格の確認に関し、その有している資料について相互に通報しなければならない。

 

( 3 ) 「緊急かつやむを得ないとき」とは、予測のつかない災害等の危険を避けるため目的外利用について本人の同意を得る時間的余裕のないときで、かつ本人の利益を保護するためと客観的に認められる場合です。
このような緊急性があるときに、本人同意の原則を貫くことは、かえって個人の生命、身体、財産の安全を欠くことになるため、例外的に目的外利用を可能にしています。

 

(4)「住民の福祉の向上を図るため」とは、憲法に保障された健康で文化的な生活を営む権利を具現化し、その生活の向上及び増進する目的を持つことをいいます。
「それらに準ずる規程」とは、具体的には要綱をいいます。
自治体が、法令等又は要綱の定めに基づき適正に業務を行う場合においては、住民サービスの向上と行政運営の効率化を図るため、本人の同意を得ないで目的外利用をすることができます。例としては、次のようなものがあります。
A 課において、○○ 法の適用を受ける、△△ 制度対象者を把握するため、B 課が管理している「△ △ 制度受給者台帳」の個人情報を利用すること。

 

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(5) それ以外に、本人の同意を得ないで目的外利用をする必要があるときは、個別事項ごとに事前に審査会に諮問し、その意見を聴いたうえで、それぞれの実施機関において決定します。
なお、本人外収集と同様に、審査会答申に基づく「事前一括承認基準」に該当するときは、改めて審査会の意見を聴く必要はありません。「事前一括承認基準」に該当するか、審査会に諮問するかの判断に当たっては、総務課長に協議します。

 

5 目的外利用をしたときは、その状況を把握しておくため、規則で定める事項を記録して、住民の閲覧に供します。
この「規則で定める事項」は、以下のような事項が考えられます。

 

(1 ) 保有課の名称
(2 ) 業務の名称
(3 ) 目的外利用をした理由
(4 ) 目的外利用をした個人情報ファイルの名称
(5 ) 目的外利用をした保有個人情報記録の項目
(6 ) 目的外利用の根拠
(7 ) 目的外利用を開始した年月日
(8 ) 目的外利用の期限
(9 ) 目的外利用の形態
(10) 保有個人情報を使用する課の名称
(11) 前各号に掲げるもののほか、住長が必要と認める事項

 

6 これらに反して目的外利用をされた場合は、条例により、当該個人情報の本人に対して自己情報の利用中止請求の権利
を認めています。

 

【運用】
1 本人同意の取り方
(1 ) 目的外利用の必要が生じたときに、該当者にその旨通知し、同意書を返送してもらいます。
なお、あらかじめ目的外利用をすることがわかっている場合には、届出書又は申請書に同意欄を設けて、届出又は申請時に同意を得るようにします。その方法は、( 2 )以下を参考にして、事務の性質や個人情報の内容により、適当な方法で行います。

 

(2 ) 届出書や申請書に目的外利用についての同意欄を設け、必要な場合に別途記名押印をしてもらいます。
申請時に所得の確認が必要な場合で、課税証明書の添付に代わる方法として、実施機関において本人の所得等を調査することに同意を得る場合

 

○ ○ ○ 受 給 申 請 書
住 所
氏 名 印
私の年間所得額、扶養の確認については、○ ○ 課長が、総務部課税課で保管している課税台帳により行うことに同意します。氏 名 印

 

(3) 届出書や申請書に目的外利用についてあらかじめ記載しておき、届出書等の記名押印によって、同意があったものとします。
福祉サービス等の申請で、支給対象者であることを確認する場合
○ ○ ○ 申請書
を申請します。
住 所
氏 名 印
〔注意事項〕手当の支給決定に必要なので、あなたの児童扶養手当の受給状況については、子ども家庭部児童女性課の台帳で確認します。

 

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( 4 ) 受付窓口や電話で、口頭により、同意の意思を確認します。この場合、口頭による同意があった旨の記録をしておきます。

 

2 団体名簿等の取扱い
自治体と事務事業の執行に関して密接な関係にある地域の団体等から、当該団体の役員又は構成員の氏名等若しくは名簿が提供された場合は、条例の収集とみなします 。
このように収集された個人情報又は名簿等は、当該事務事業の所管課のみならず、実施機関内部で、各種会議への参加依頼、アンケート調査、新年賀詞交歓会の名簿作成等に利用される場合があり、これは目的外利用になります。
ただし、これらの利用内容をあらかじめ当該団体の代表者に明示し、団体の同意を得てその範囲で利用する場合は、目的外利用には該当しません。
このため、団体の所管課は、提供される個人情報の利用について、あらかじめ次のいずれかの方法により団体の同意を得るようにします。
団体の例 町会自治会、商店会連合会、各種審議会
(1 ) 団体の代表者に、同意書を提出してもらいます。代表者には、団体の会合等で構成員に了承してもらうよう依頼します。

 

同 意書の例
同 意 書
○ ○ 町会の名簿( 町会長の住所、氏名、電話番号)を住の機関内部で下記事項について利用されることについては、了承します。

1 新年賀詞交歓会の名簿作成
( 配付先) ① 新年賀詞交歓会出席者
② 市の各課
③ △ △ △
④ その他配付希望者
2 住の各課での利用
3 △ △ △
4 その他会長に協議し、所管課が認めた場合
住○ ○ 部○ ○ 課長 殿
町会自治会連合会会長
又は町会自治会○ ○ 地住会長
住 所
氏 名 印

 

(2) 団体の会合、委員会等の委嘱式の席上で、口頭により趣旨を説明し、同意の意思を確認します。
いずれの方法によるかは、団体の性格、利用する個人情報の内容等により判断します。

 

3 目的外利用の決定事務手続
(1 ) 通常の目的外利用の場合
① 目的外利用をしようとする課( 以下「利用課」という。) は、個人情報を保有する課( 以下「保有課」という。) 及び総務課と事前に協議します。
協議においては、目的外利用以外の方法によることができないか、条例の根拠に該当するか、審査会への諮問の必要性等について検討します。
② 電算処理を伴う目的外利用については、情報課にもあらかじめ協議します。
③ 利用課の課長( 以下「利用課長」という。) は、保有課の課長( 以下「保有課長」という。)に「目的外利用申請書」を提出します。

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④ 保有課長は、条例及び解釈運用基準に照らして、目的外利用の可否を決定します。
⑤ 保有課長は、決定後、「目的外利用決定書」を作成し、利用課長に通知します。
⑥ 電算処理データを目的外利用する場合において、当該データ利用が保 有課長に了承された場合は、利用課長は、情報課長に「目的外利用決定書」の写しを提出します。
⑦ 利用課長は、前記⑤ で承認された範囲で、目的外利用を行います。

 

(2 ) 審査会に諮問する場合( 手処理文書の目的外利用)
① 事前協議
② 利用課長は、保有課長に「目的外利用申請書」提出します。
③ 保有課長は、総務課長に審査会への諮問依頼をします。目的外利用の決定は、審査会の答申があるまで保留します。
④ 総務課長は、諮問事項について起案し、住長決定を行い、審査会に諮問します。
⑤ 審査会答申
⑥ 総務課長は、答申の内容( 答申書の写し)を保有課長に通知します。
⑦ 保有課長は、答申を尊重し、目的外利用の可否を決定します。
⑧ 決定通知

 

( 3 ) 審査会に諮問する場合( 電算処理データの目的外利用)
① 事前協議
② 事前協議
③ 利用課長は、保有課長に「目的外利用申請書」提出します。
④ 保有課及び利用課は、諮問事項について、情報課とヒアリングを行います。
⑤ 前記④ の後、保有課長は、総務課長に審査会への諮問を依頼します。目的外利用の決定は、審査会の答申があるまで保留します。
⑥ 総務課長は、諮問事項について起案し、住長決定を行い、審査会に諮問します。
⑦ 審査会答申
⑧ 総務課長は、答申の内容( 答申書の写し)を保有課長に通知します。
⑨ 保有課長は、答申を尊重し、目的外利用の可否を決定します。
⑩ 保有課長は、決定後、「目的外利用決定書」を作成し、利用課長に通知します。
⑪ 電算処理データを目的外利用する場合において、当該データ利用が保有課長に了承された場合は、利用課長は、情報課長に「目的外利用決定書」の写しを提出します。
⑫ 利用課長は、前記⑩ で承認された範囲で、目的外利用を行います。

 

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4 目的外利用記録票の作成手続
(1 ) 目的外利用をしたときは、利用課長は、「目的外利用記録票」を作成し、保有課長に1 部、総務課長に1 部送付します。なお、総務課長に送付するときは、「目的外利用決定書」の写しを添付します。
(2 ) 保有課長は、送付を受けた「目的外利用記録票」の1 部を個人情報業務 登録票の写しの後に「目的外利用申請書」、「目的外利用決定書」とともに、つづり込みます。
(3 ) 総務課長は、送付を受けた「目的外利用記録票」を個人情報業務登録票の後につづり込みます。「目的外利用決定書」は所定のファイルに保管します。
( 4 ) 「目的外記録票」の記載要領
目的外記録票は、次の要領で記載します。
① 保有課
目的外利用をする個人情報を保有している課名を記入します。
複数課で同一業務を行っているため、登録課名を設定して業務登録した場合には、その「業務の登録課名」を記入します。
② 保有課の業務の名称、個人情報業務登録番号
目的外利用する保有個人情報が収集されている業務名及び登録番号を、保有課に確認し、記入します。
③ 利用課
目的外利用をする課の名称を記入します。
④ 利用課の業務の名称、業務登録番号
目的外利用をする業務名及び登録番号を記入します。
⑤ 目的外利用をした理由
目的外利用をした理由を具体的に記入します。
⑥ 目的外利用をした個人情報ファイルの名称
個人情報ファイルを利用したときは、その名称を記入します。なお、個人情報ファイルの登録がされていない場合には、新たに届出が必要です。
⑦ 目的外利用をした保有個人情報記録の項目
利用課が利用した保有個人情報の項目を全て記入します。記入欄が足りないときは、別紙に記入して提出します。
⑧ 目的外利用の根拠
条例の該当条項を記入します。本人同意以外で外部提供を行う場合については、条項のみならず、次のように具体的な理由もあわせて記入します。
 法令 法令等の具体的名称及び条項
 緊急 具体的な緊急性
 出版 出版、報道等の具体的内容
 福祉向上 具体的な福祉向上性、根拠となる規程の名称
 審査会 審査会へ諮問したときは審査会答申年月日を、事前一括承認基準に該当するときはその具体的な根拠(根拠法令名及び条項)
⑨ 目的外利用の期限
利用に期限がある場合に記入します。業務が継続する限り利用する場合は、「□ 継続」に「レ印」を入れます。
⑩ 目的外利用の形態
目的外利用する保有個人情報の形態について、いずれかに「レ印」を入れます。
⑪ 担当部課
目的外利用をした部課係名、電話番号を記入します。

 

5 個人情報業務登録内容の修正
(1 ) 目的外利用により収集した個人情報について、利用課における既存の業務登録内容の変更( 個人情報記録の項目の追加) をします。
(2 ) 目的外利用により収集した個人情報により、新たな業務を行うこととなるときは、新規に業務登録の手続をとる必要があります。

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