行政文書の基本|公文書でのメモの取り扱い、書類紛失の際の対応は

行政文書の基本|公文書でのメモの取り扱い、書類紛失の際の対応は

行政文書の基本|公文書でのメモの取り扱い、書類紛失の際の対応は

文書の適正管理

現在及び将来の住民との共有財産である行政文書には、住民に対して説明責任を果たすという重要な役割があります。
自治体の行政文書の所在や意思決定の記録は、原則として住民が常に知ることができる状態にあるべきです。
その役割を果すためには、その所在や記録が、決められた方式により、職員だけでなく、誰もが客観的に分かる形で管理されている必要があります。
文書の分類整理を整然と行うのは、もちろん職員の事務を効率化するためでもありますが、それだけでなく、外部への説明責任を果たすために必要なことであるということを常に意識する必要があります。

 

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1 文書の適正管理とは
行政文書は、原則として作成、取得から廃棄に至るまで、文書管理システムに必要な事項を記録し、適正に管理しなければなりません。
(1) 文書管理システムへの登録
行政文書のうち、原則として保存期間が1年以上の文書については、文書管理システムに必要な事項を記録して、登録をしなければなりません。
(2) 迅速な処理と分類整理
行政文書は、迅速に処理しなければなりません。
実際に受け取ったり作成したりしてから、登録などの処理を行うまでに時間が空いてしまっては、正確に管理することができ
なくなってしまいます。
また、迅速かつ正確に処理を行うためにも、そして行政文書開示請求に迅速に対応するためにも、行政文書は常に整然と分類整理し、いつでも直ちに利用できるように保存しなければなりません。
(3) 適正な保存管理
紙文書の保存に当たっては、紛失、火災、盗難等の予防のための措置をしなければなりません。
具体的には、個人の執務机ではなく共用の什器への収納の徹底や、秘密度に応じた施錠の管理などが挙げられます。
また、重要なものは、非常災害に際し、いつでも持ち出せるようにしておかなければなりません。
電子文書についても、文書管理システムにおいて必要な情報セキュリティ対策を行うことにより、紛失、盗難、改ざん等の予防の措置を講じるとともに、非常災害に備えてバックアップの措置を行います。

 

2 文書の適正管理はなぜ必要か
(1) 事務執行の効率化
文書を共通のルールで適正に管理する目的は、大きく分けて三つあります。
まず一つには事務の効率化があります。
業務上使用する文書を、各担当者や各係の考え方により保存管理していたのでは、文書を探し出すのに時間がかかるだけでなく、担当者が不在のときに、文書の所在が分からないために業務が滞ることにもなりかねません。
また、所在が分からないために業務が滞るのは、そのとき業務を行っている職員だけではありません。
保存期間が長い文書においては、何年後何十年後かに、その当時のことを全く知らない職員が文書を必要とすることがあります。
ルールに基づいた管理を行っていないと、その当時のことを知らない職員は、文書を迅速に探すことができません。
将来にわたって文書を探しやすくするためには、適切な文書分類に従い、共通のルールに沿って文書管理を行う必要があります。

 

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(2) セキュリティ
もう一つの目的は、自治体が保有する行政文書のセキュリティを確保することです。
自治体が保有する行政文書には、個人情報をはじめ、多くの秘密情報が含まれています。
そういった情報の漏えいを防ぐためには、決められたルールに従って管理を行う必要があります。
また、ルールに従って厳重な管理を行うことにより、漏えいを防ぐだけでなく、どの組織が、どのような文書を、どこに保管しているかを把握し、自治体の統一した基準で管理することが必要です。
どこの課がどのような文書をどこに保管しているのかをきちんと管理していない場合、たとえ秘密情報を持ち出されても、持ち出されたことすら分からないという事態になってしまいます。
また、個人情報保護条例等では、自治体は、不必要な個人情報を保有しないこと等も含めて、個人情報を扱うことに関してさまざまな義務が課せられています。
自治体が適正に管理していることを外部に対して説明するためには、どのような個人情報をどのような基準で保有しているのかを、客観的な情報として示すことができなければなりません。
そして、その基準は自治体の中で統一されたものでなければなりません。

 

(3) 説明責任(情報公開)
そして、最も重要な目的は、外部への説明責任を果たすことです。
情報公開制度は、住民との協働による開かれた政治を目指し、自治体が住民に対してその活動を説明する責務を明確にした制度です。
しかし、開示請求権が保障されるためには、開示請求の対象である行政文書が適正に管理されていなければなりません。
実際には存在する行政文書が目録に載っていなかったり、行政文書の管理の基準が担当者によって変わったり、あるいは存在する文書の所在がすぐに分からない状態では、開示請求権の目的が実現できないからです。
また、情報公開制度とは、請求された時に探して開示すればいいということを意味するのではありません。
住民との共有物である行政文書については、開示請求があったときに初めて探し出すのではなく、どの組織がどういった文書を保有しているのかが客観的な基準で明らかになっていることが必要です。
そうでなければ、開示請求権が保障されているとはいえません。
つまり、文書を適正に管理していることは、情報公開制度を適正に運用するために欠かせません。
また、自治体が説明責任を果たすうえでも、文書はその客観的な証拠となるものです。
文書管理はこれまで、仕事をする職員の側の効率化や整理整頓というような側面のみで考えられることが多くありました。
そのため、本来の担当業務の本質とは関係のない「雑務」としておろそかにされてきたのが現実です。

 

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しかし、現在においては公の「情報管理」に対する考え方は大きく変わりました。
現在では、文書管理を行う目的は、内部事務よりもむしろ外部に対しての説明責任を果たすことに重きが置かれています。
すなわち、自治体の行政文書は区民との共有物であり、自治体がどのような文書を所有しているのか、どのような意思決定がなされたのかという記録は、原則として住民が常に知ることができる状態にあるべきです。
そして、文書の内容についても原則として住民が容易に知ることができるようにすべきです。
誰が見ても分かりやすい分類で適正に文書を管理することは、内部的な事務の効率化という側面だけではなく、外部に対する説明責任の面からの要請であることを認識する必要があります。
文書管理に関して、よく、「自分たちが保存場所を把握しているのだからかまわない」「自分たちが効率的な方法で行っているのだからかまわない」というような誤った認識を持った職員が見受けられますが、前述のとおり、文書管理は「自分たちが文書を使うため」だけに行っているのではありませんので、注意が必要です。

 

文書管理の対象

1 行政文書とは
文書管理規則における「行政文書」とは、職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録をいいます。
決定済みか否かは関係がありません。
決定が済んでいなくても、また、決定していない文書であっても、作成済みの文書(例えば回議中の文書)であれば行政文書となりますが、基本的には職員の個人的なメモや職員個人が作成途中の文書は含みません。

 

(1) 行政文書と個人メモ
行政文書というのは、実施機関の組織において、事務事業の執行上必要なものとして、利用、保存されるものを意味します。
したがって、職員が自己の執務の便宜のために保有する正式文書と重複する当該文書の単なるコピーや、職員の個人的な検討段階にとどまる資料等(いわゆる個人メモ)は、これに当たりません。

 

(2) 紙文書と電磁的記録
電磁的記録であっても、行政文書に当たるか否かは、(1)と同じ判断をします。
また、文書管理システムに登録される電磁的記録に限らず、業務用システム(当該事務処理のために特別に作成されたプログラムを用いてパソコン等により処理を行っているものを含みます。)のデータ等についても、実施機関が組織的に利用・管理するものと認められるので、原則として行政文書に該当します。

 

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2 管理職が保有する文書
係に属さず、管理職が保有する文書は、次のように扱います。
(1) 管理職が取得した文書
管理職が出席する会議資料など、管理職のみがその組織の業務として取得した文書は、行政文書に該当するため、庶務担当係等が収受登録又は資料登録を行い、管理します。
(2) 管理職が作成した文書
管理職が自ら作成した文書も、組織として共用する場合には行政文書です。
組織の業務として使用するものについては、(1)と同様に登録して管理を行う必要があります。
ただし、会議説明用のメモなど個人用の資料については、行政文書には当たりませんので、登録は行いません。
(3) 例外的な扱いをする文書
管理職が保有する文書のうち、職員の人事評価に関する資料等、組織として登録管理をすることが適切でない文書については、例外的に文書登録は不要とし、管理職が適切に管理します。

 

3 議会議事録、事業報告書等の印刷・製本形態の行政文書
事業報告書や予算書等、閲覧用の印刷・製本形態の冊子が全庁的に配布されるような場合には、各係でそれぞれ行政文書として登録管理をする必要はありません。
作成元が原本として管理するのは当然ですが、配布された部署は、任意の扱いでかまいません。
配布された部署では、業務上の必要性を判断し、保管を行いますが、収受登録などはする必要がありません。
ただし、印刷・製本形態の行政文書であっても、外部から特定の組織のみに送付された場合など、その係が主体となって一定期間所在を管理する必要がある場合については、登録してその所在を管理する必要があります。

 

4 マニュアルや図書の扱い
全庁的に公開されているマニュアル、資料や手引類、又は行政文書に当たらない図書などについては、各係で登録する必要はありません。
係員が使用しやすい場所に置いておけば足ります。
この場合であっても、資料登録を行うことにより、業務を効率的に行うことができるのであれば、資料登録を行ってもかまいません。
ただし、特定の部署内のみで作成・使用されているマニュアルについては、行政文書としてその所在を管理します。
また、図書であっても専門の機関紙など、その係が主体となって一定期間所在を管理する必要がある場合については、資料文書としてその所在を管理する必要があります。

 

5 付属機関の事務局として管理する文書
地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の付属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会そのほかの調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができます(地方自治法第138条の4)。
これに基づいて付属機関を設置している場合において、その付属機関の事務局としての文書を管理するときは、その文書は執行機関としての自治体が組織的に保有する文書ですので、自治体の行政文書として扱います。

 

6 自治会地区連合会等各種団体の事務局として管理する文書
自治会地区連合会等各種団体は自治体の組織ではないため、その事務局として管理する文書は、厳密には情報公開条例上の自治体の保有する行政文書に当たりません。
しかし、組織規則、職務権限規程、出張所処務規程又は要綱などで、「自治体の事務として執り行うこと」や「事務局を置くこと」が正式に定められているような場合は、自治体の事務執行により生じた自治体の行政文書として正式に登録して管理する必要があります。

 

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なぜなら、現実にはこれらの文書は自治体の組織としての文書とあまり区別せずに扱われているため、実際に行政文書開示請求があったとき、「うちの文書ではないから開示請求の対象にはならない」と主張するのは難しいからです。
どの自治体においても、文書として管理されている以上行政文書開示請求の対象とすべきと判断をする傾向になってきています。
したがって、各種団体の事務局として職務を行うに当たり、地方公務員法上の職務専念義務の免除を受け、かつ、自治体の行政文書と明確に区別して保管している状態でなければ、他の行政文書と同様に管理を行います。

 

7 個別のシステム内でデータを管理する場合
個別の業務システム内においてデータを管理している場合においても、そのデータは行政文書に当たりますので、目録を管理する必要があります。
したがって、そのデータについても行政文書ファイルとして管理するものとし、文書管理システムに分類・フォルダを作成して、他のフォルダと同様に管理します。この場合、フォルダの所在場所は、事務室とします。

 

8 作業中の文書の扱い
作業中の文書は、行政文書ではありませんので、文書登録の必要はありません。
しかし、個人情報等の秘密情報が含まれている場合には、その扱いに十分注意する必要があります。

 

文書管理の単位

1 行政文書ファイル(フォルダ)ごとの管理
文書は「行政文書ファイル」単位に分類整理し、管理するべきものです。
「行政文書ファイル」とは、実際に発生した文書を管理していくための最小の単位です。
そして、その行政文書ファイルごとに文書管理システムにフォルダを作成して管理します。
行政文書は、当然1件1件を適正管理しなければいけませんが、行政文書の所在や保存期間などの目録を、すべて文書1件ごとに管理していたのでは、膨大な量の行政文書を効率的に管理することができません。
そこで、所在場所や保存期間を同じく管理できる同種の文書を集め、フォルダごとに管理をすることにより、適正に管理を行います。

 

2 係ごとの管理
行政文書は、上記のとおり行政文書ファイルを単位として、係ごとに保存するものとしています。
文書をどの係が保存管理するかは、組織規則や職務権限規程等によりその事務を所掌する係がどこかで決まります。
そしてこの管理は、行政文書が発生したときに(収受や起案のときに)どの係が処理を行うかということだけではなく、過去に発生した文書の管理についても同様です。
例えば、文書の保存を開始して何年後かに組織規則の改正等により事務分掌が変わったとしたら、その文書は新たにその事務を所掌する係が管理しなければなりません。

 

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