「より、から」の違いと使い分け方|「日頃より、日頃から」公文書での使い方

「より、から」の違いと使い分け方|「日頃より、日頃から」公文書での使い方

「より、から」の違いと使い分け方|「日頃より、日頃から」公文書での使い方

 

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「より」と「から」の違いなど、次に示す言い回しは、意味が似ていて間違いやすく、使い分けがあいまいになりがちです。
正確には意味が異なるものですので、公用文においては、間違った言い回しをしないよう十分注意が必要です。

 

「より」と「から」の違いと使い分け方

「から」は時を表す語に付いて行動の始点を表し、場所を表す語に付いて出発点を表します。
一方「より」は、物の比較をする場合に用いる語で、後にはものを形容する語が続きます。
「より」も文語体では動作の時間的・空間的な起点を表す語として用いられてきたので、今でも世間一般では「5時より会議を始めます」など、「から」との混用されています。

 

しかし、公用文においては混用は認められていません。
「より」は比較を表す場合のみに用い、時・場所の起点を表す場合には「から」を用います。
使い分けを簡単に言うと、「より」と「から」のいずれも用いることができる場合は、「から」を用います。

 

よく「日頃より」という表現を見掛けますが、「日頃から」でも意味が通じるので、正しくは「日頃から」となります。
「より」は語感が柔らかいのでつい使ってしまいがちですが、時間や経路の始まりを表す起点の助詞には「から」を用いなければなりません。

 

【具体例】

・屋根より高い鯉のぼり(比較)
・多くの意見書が、地方議会から(×より)提出された。(起点)
・日頃から(×日頃より)
・東京から京都まで(×より)
・午後1時から始める(×より)
・恐怖から解放される(×より)
・上司から説明があった(×より)

 

「~から」と「~まで」の使い方

範囲を示す場合は、必ず「~から~まで」と表現し、後の「まで」を落とさないよう注意します。
「まで」を省略しても意味が通じることが多いため、省略されがちですが、「まで」を入れるのが正しい表現です。

 

【具体例】

第1章から第3章までを暗唱しなければならない。

 

列挙の「たり」の使い方

「たり」を用いて二つの事柄を列挙する場合は、一つ目に「たり」を付けたら、二つ目にも必ず「たり」を付けます。
「休日には、映画を観たりしています」のような、列挙せずに一つの事柄に「たり」を付ける使い方も許容されます。
なお、「たり」を二度繰り返す構文に違和感がある場合は、「~とともに」を代用できます。

 

円安が進むと、物の値段が高くなったり、日本の株価が上がったりする(×上がる)可能性がある。

 

助詞「の」の使い方

「の」は所有を表す便利な助詞のため、乱用されがちです。
法令には連続3回用いている例もありますが、公用文では2回までにするようにします。
「の」が連続3回になりそうなときは、「係る」「関する」「おける」などを代用すると文章の収まりが良くなります。

 

× 市町村の人口の減少の状況
○ 市町村の人口に係る減少の状況
○ 市町村の人口の減少に関する状況
○ 市町村における人口の減少の状況

 

助詞「も」の使い方

付加を表す「も」も多用しがちなので注意します。
例えば「このような事態を受け、政府も対策の検討を始めた」という文では、政府以外も検討主体があるなら正しいですが、そうでないなら「政府も」ではなく「政府は」が正しくなります。

 

助詞「が」の使い方

「が」は、本来は逆接を意味する接続助詞ですが、逆接でない意味でも多用されているのが現状です。
例えば「様々な課題があるが、一つ一つの課題について検討したい」という文章は、前置きとして「が」が使われています。
決して誤りではありませんが、「が」が増えると文章が読みづらくなるので多用には気を付けてください。
この場合は、逆接ではないので、単に「課題があり、」で問題ありません。

 

助詞「と」の使い方

並列を表す格助詞の「と」は、本来「私と彼とは、友達だ」のように「と」を繰り返して用いるべきです。
ただし、「私と彼は、友達だ」と「と」を省略することも慣用されているので、許容されます。

 

【具体例】

・東京大阪の間

 

・赤を使う。

 

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「ついては」と「あっては」の使い分け方

公用文ではよく「ついては」や「あっては」の表現が用いられますが、「あっては」は2以上の事柄を列挙する場合に用いるのが原則です。
それ以外の場合は「ついては」を使います。

 

【具体例】

市長部局にあっては本日中に、その他の部局にあっては明後日までに意見を取りまとめます。

 

ちなみに、1つの事柄についてであっても、次のような括弧書きの中などで選択的な事柄を示す場合は、「あっては」を用いることがあります。

行政機関の官房長(官房長を置かない庁にあっては、それに相当する職にある者)は、報告しなければならない。

 

「従来から」は誤り

「従来」のみで「以前から」という意味があるため、「従来から」という言い回しをするのは誤りです。
「従来は」又は「以前から」というのが正しい表現です。
また、「従前から」「かねてから」も同様で、適切な表現ではありません。
ただし比較の意味で使用する「従来よりも」は、正しい表現です。

 

「従来から」のような意味が重なっている語句は「重言」と呼ばれ、誤った表現のため公用文で使用しないよう注意してくだい。
重言の例

一番最後 全て一任 いまだに未完成
今の現状 違和感を感じる
日を追うごとに 過信しすぎる
各都道府県ごとに
過半数を超える 期待して待つ
挙式を挙げる 古来からの
最後の追い込み まだ時期尚早
諸先生方
製造メーカー 第○日目
当面の間 排気ガス 返事を返す
まず最初に 約○人ぐらい
被害を被る

※一方、「アンケート調査」「故障中」「防犯対策」などの用語は、慣用されているので重言扱いされず許容されます。

 

「場合」と「とき」の使い分け方

条件を表すときに「~場合は」なのか「~場合には」という問題があります。
公的なルールはないものの、語感が変にならない限りは、「場合は」の方を用いた方が文章が簡潔で分かりやすくなります。

 

また「場合」と同じく条件を表わす「とき」の違いも問題もあります。
こちらも公的なルールはなく、ほとんどの場合相互に入替え可能ですが、原則して「とき」を用います。
ただし、「場合」と「とき」を同時に用いる場合には、「場合」を大前提に、「とき」を小前提に用います。

 

【具体例】

他省庁から協議があった場合【大前提】において、その内容に意義があるとき【小前提】は、すぐに総務課まで連絡すること。

 

「ならば」の「ば」は略さない

「ならば」の「ば」は略しません。

 

【具体例】

留守ならば、引き返します。(×留守なら、引き返します。)

 

まとめ

・「より」と「から」のいずれも用いることができる場合は、「から」を用いる。
・範囲を示す場合は、必ず「~から~まで」と表現し、後の「まで」を落とさない。
・「あっては」は2以上の事柄を列挙する場合に用いるのが原則。それ以外の場合は「ついては」を使う。
・「従来から」 は誤り。「従来は」又は「以前から」というのが正しい表現。
・「場合は」と「とき」は、通常どちらを用いるべきかの基準はない。ただし、同時に用いる場合には、「場合」を大前提に、「とき」を小前提に用いる。
・並列の意味で「と」を使うときには、なるべく最後の語句の後にもつける。
・「ならば」の「ば」は略さない。

 

 

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