公用文では、漢字で「し得る」と書きます。読み方は「しうる」「しえる」のどちらでもよく、意味は同じ「することができる」「する可能性がある」です。ただし、打ち消しや過去の形は「し得ない(しえない)」「し得た(しえた)」になります。
し得る(しうる/しえる)……事故が発生し得る箇所/想定し得る最大規模の災害
し得ない(しえない)……現状では実現し得ない。
あり得る(ありうる/ありえる)……誤りもあり得る。
この記事では、漢字で書く根拠、「しうる」と「しえる」の違い、形の変わり方、分かりやすい言い換えを説明します。
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根拠は次のとおりです。
1 常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)
「得」には「える」と「うる」の二つの訓読みがあり、「うる」の例として「得るところ」「書き得る」が載っています。つまり、「~し得る」の形で漢字を使うことが、表の中で示されています。
2 内閣訓令「公用文における漢字使用等について」(平成22年内閣訓令第1号)
公用文の漢字使用は常用漢字表による、とされています。訓令が仮名で書くとしている語(「ある」「いる」「できる」「・・・てよい」など)の中に、「得る」は入っていません。
3 「公用文作成の考え方」(令和4年1月 文化審議会建議)
補助的な用法で仮名で書く例として「~ていく」「~ていただく」「~てくださる」「~てくる」「~てみる」「~てほしい」「~てよい」を挙げていますが、「得る」は入っていません。また、本文の中でも「全ての国民が読み手となり得る」と漢字で書いています。
法令でも漢字で書かれています。例えば水防法第14条には「想定し得る最大規模の降雨」という表現があります。
「し得る」は、「しうる」とも「しえる」とも読みます。意味に違いはありません。
ただし、「うる」の形で使えるのは、言い切り(「~し得る。」)と、名詞に続く形(「~し得る場合」)だけです。打ち消し、過去、丁寧な形などは「える」の形で変化します。
| 形 | 書き方 | 読み |
|---|---|---|
| 言い切り・名詞に続く | し得る | しうる/しえる |
| 打ち消し | し得ない | しえない |
| 過去 | し得た | しえた |
| 丁寧 | し得ます | しえます |
「しうない」「しうた」という形はありません。漢字で「し得る」と書いておけば、読み方で迷わせることもなくなります。
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事故が発生し得る箇所を点検する。
想定し得る最大規模の災害に備え、避難計画を見直す。
現行の体制では、十分に対応し得ない。
同様の事案は、他の自治体でも起こり得る。
誤りもあり得るので、提出前に確認してください。
「あり得る」の「あり」は、訓令で仮名で書くとされている「ある」なので平仮名、「得る」は漢字で書きます。
「し得る」はやや硬い表現です。広く一般の人に向けた案内や広報では、次のように言い換えると伝わりやすくなります。
| 「し得る」の文 | 言い換えの例 |
|---|---|
| 浸水が発生し得る地域 | 浸水するおそれがある地域 |
| 誰でも利用し得る施設 | 誰でも利用できる施設 |
| 誤りもあり得る | 誤りがあるかもしれない |
「可能性がある」意味なら「おそれがある」「かもしれない」、「できる」意味なら「できる」に言い換えると、意味がはっきりします。「おそれ」「できる」の書き方は、「おそれ、恐れ」の使い分け方、「できる、出来る」の違いをご覧ください。
「~していく」「~してみる」のように、「て」の後に付いて補助的に使う言葉は、公用文では平仮名で書きます。「し得る」と混同しないようにしましょう。
| 平仮名で書く(「て」に続く) | 記事 |
|---|---|
| ~ていく(増えていく) | 「いく、行く」 |
| ~てくる(寒くなってくる) | 「くる、来る」 |
| ~てみる(試してみる) | 「みる、見る」 |
| ~ていただく(報告していただく) | 「いただく、頂く」 |
| ~てください(提出してください) | 「ください、下さい」 |
| ~てほしい(確認してほしい) | 「ほしい、欲しい」 |
「し得る」は「て」に続く形ではなく、常用漢字表に例もあるので、漢字で書きます。
Q 「しうる」と平仮名で書くのは間違いですか。
A 一般の文章では間違いではありません。ただし公用文では、常用漢字表に「書き得る」の例があることから、漢字で「し得る」と書きます。
Q 「し得る」は「しうる」と「しえる」のどちらで読むのが正しいですか。
A どちらも正しい読み方です。ただし、打ち消しや過去の形は「しえない」「しえた」になります。
Q 「ありうる」「ありえる」はどう書きますか。
A 公用文では「あり得る」と書きます。打ち消しは「あり得ない(ありえない)」です。
・公用文ではし得ると漢字で書く(常用漢字表の例「書き得る」)
・読みは「しうる」「しえる」のどちらでもよい。打ち消し・過去は「し得ない」「し得た」
・「あり得る」は「あり」が平仮名、「得る」が漢字
・住民向けには「できる」「おそれがある」などに言い換えると分かりやすい
根拠の原文は、文化庁の「常用漢字表」(PDF)と「公用文作成の考え方(建議)」(PDF)で確認できます。
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