「あわせて、併せて、合わせて」の違いと使い分け方|公用文漢字

公用文やビジネス文書を書く際に、「あわせて」「併せて」「合わせて」といった同じ読みの言葉の使い分けに迷ったことはありませんか?
これらの言葉は品詞(役割)によってひらがなと漢字を使い分ける決まりがあり、意味や使い方にも微妙な違いがあります。
本記事では、「あわせて」と「併せて」と「合わせて」を中心に、公用文における正しい表記ルールと使い分け方を詳しく解説します。関連キーワードである「あわせて 使い分け」や「併せて 意味」、「あわせて 公用文」といったポイントも押さえながら、間違えやすい表現を整理していきましょう。

 

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公用文での漢字とひらがなのルール背景

公用文(官公庁の文章など)では、漢字とひらがなの使い分けに関する明確なルールがあります。特に接続詞と副詞の表記については、「接続詞はひらがな、副詞は漢字で表記する」のが原則です​。

 

接続詞とは文と文をつなぐ働きをする言葉(例:「そして」「しかし」など)で、一方の副詞は主に動詞や文全体にかかって状態・程度・時間などを修飾する言葉(例:「ゆっくり」「すでに」など)です。
同じ読みの言葉でも、この品詞の違いによって漢字とひらがなを使い分ける必要があるのです。
例えば、「したがって」という言葉は接続詞として因果関係を示すときはひらがなで「したがって」と書きます(意味:「その結果」「だから」)。これを誤って漢字の「従って」と書いてしまうのは公用文では誤りです(「従って」は本来「~に従って」のように動詞に従属する形で使われます)。

 

同様に、「ただし」(意味:「しかしながら」「ただ、~の場合は」)や「なお」(意味:「付け加えて言えば」)も接続詞のため、公用文では「ただし」「なお」とひらがなで書くのが正式です。
漢字の「但し」や「尚」と表記するのは旧来の表記であり、現代の公用文では避けます。
ただし、すべての接続詞がひらがな表記になるわけではなく、例外的に慣用的に漢字表記する接続詞もあります。
代表的なものに「及び」「並びに」「又は」「若しくは」などがあり、これらは法令などで漢字のまま使われるケースが多い接続詞です​。

 

しかし一般的な文章作成においては、原則どおり接続詞はひらがな表記にすることで読み手にとって分かりやすく、誤解のない文章になります。
それでは、実際に紛らわしい「あわせて」と「併せて」と「合わせて」について、その意味の違いと正しい使い分け方を見ていきましょう。

 

「あわせて」「併せて」「合わせて」の意味と使い分け

「あわせて」「併せて」「合わせてて」は読みが同じ(あわせて)ですが、接続詞として使う場合は「あわせて」とひらがなで書き、副詞として使う場合は「併せて」と漢字で書き、動詞として使う場合は「合わせて」と書きます。
公用文ではこの区別がとても重要です。それぞれの意味や使い方の違いを詳しく解説します。

 

「あわせて」(接続詞)の意味・使い方

ひらがな表記の「あわせて」は接続詞です。意味は「そしてそれに加えて」「同時に(付け加えて)」といったニュアンスで、前の文にさらに情報を付け加える際に用います。英語の "in addition" や "also" に相当し、公用文や改まった文章では「さらに」「また」に近い役割を果たします。
文頭あるいは文中で使われ、直後に読点「、」を付けて「あわせて、~」の形で用いるのが一般的です。

 

【例文】

あわせて、住民の意向調査を行うべきである。
当日は講演会を実施します。あわせて、質疑応答の時間を設けます。

 

上記の例文の「あわせて、~」はいずれも接続詞で、「さらに」「加えて」という意味で使われています。この用法では漢字ではなくひらがなで表記する点に注意しましょう。公用文では「併せて」「合わせて」と漢字で書かないようにします。
「あわせて」の接続詞用法の類語には「また」「さらに」「及び(および)」などがありますが、「及び」は硬い表現なので日常文書では「あわせて」や「また」を使う方が自然です。

 

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「併せて」(副詞)の意味・使い方

漢字表記の「併せて」は副詞として使われる場合の表記です。意味は「同時に一緒に」「並行して」といったニュアンスで、ある動作を他の動作とまとめて行うことを表します。文章中では主に動詞を修飾し、「~と併せて」「~を併せて行う」のように用いて、「~と一緒に」「合わせて(同時に)」という意味を持たせます。英語では "together with" や "at the same time" に近い感覚です。

 

【例文】
住民の意向調査を併せて行うべきである。
資料作成と併せて、プレゼンの練習もしてください。
当社創立記念式典は、新オフィスの落成式と併せて執り行います。

 

これらの例では「併せて」は動詞「行う」「してください」「執り行います」にかかっており、「同時に」「一緒に」という意味で使われています。
副詞用法なので漢字表記するのがルールです。
「併せて」の類義語としては「同時に」「一緒に」「合わせて(合せて)」などが挙げられますが、「合わせて」と漢字で書く場合は動詞としての用法で、「一致させる」「調整する」という別の意味になる点にも注意が必要です(例:「予定を合わせて会議に参加する」)。
公用文では、意味に応じて「合わせて」「併せて」「あわせて」を正しく使い分けることで、読む人に誤解を与えない明瞭な表現になります。

 

「合わせて」(動詞)の意味・使い方

「併せて」「合わせて」の使い分けは、「一致させる」という意味の動詞には「合わせて」を使います。
「並行してという意味の副詞には、前述のとおり「併せて」を用います。
意味で使い分けると分かりやすいです。

 

創立10周年の時期に合わせて支店の店開きを行う。
創立記念日には、支店の店開きを併せて行う。

 

間違えやすい接続詞の表記一覧

最後に、公用文で間違えやすい接続詞のひらがな・漢字表記の例をいくつか整理します。同じ読みでも、接続詞として使う場合はひらがなで書くべきなのに、うっかり漢字で書いてしまいやすい言葉があります。以下の表では、正しいひらがな表記と、誤って用いられることがある漢字表記を並べました。公用文作成の際のチェックリストとして参考にしてください。

 

 

接続詞(正しい表記) 誤って使われやすい表記 意味(備考)
したがって 従って (×) 「だから」「その結果」※接続詞のため平仮名表記が原則
ただし  但し (×)  「しかし」「ただしながら」※接続詞。公用文では平仮名で書く
なお 尚 (×)  「付け加えて言えば」※接続詞。「尚」は旧字体表現
あわせて 併せて (×)  「そしてそれに加えて」※接続詞用法では平仮名表記
おって 追って (×) 「引き続き・なお」※接続詞用法では平仮名表記

 

※上記の漢字表記は、それ自体が間違った日本語というわけではありませんが、公用文において接続詞として使用する場合には不適切な表記となります。副詞など別の品詞として用いる場合には漢字表記が正しくなるケースもあります(例:「追って」は副詞なら正しい表記)。文章の中でその言葉がどのような役割を果たしているかを考え、適切な表記を選ぶことが大切です。

 

まとめ

「あわせて」と「併せて」と「合わせて」のように、同じ読みでも使い分けが必要な言葉について、公用文での正しい表記ルールと意味の違いをご紹介しました。
ポイントを振り返ると、接続詞として使う場合はひらがな表記、副詞・動詞として使う場合は漢字表記にするのが原則でした。
それぞれの語のニュアンスも踏まえて使い分けることで、文章の意味が明確になり、誤解を防ぐことができます。
公用文やビジネス文書では些細な表記ゆれが信頼性に関わることもあります。
本記事で解説した使い分け方を参考にして、「あわせて/併せて/合わせて」を正しく使いこなし、読みやすく質の高い文章を作成しましょう。

 

 

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