公務員が年度初め・年度末にやっておいた方がいい文書事務を解説

公務員が年度初め・年度末にやっておいた方がいい文書事務を解説

公務員が年度初め・年度末にやっておいた方がいい文書事務を解説

年度末・年度始めの作業の基本

分類やフォルダのメンテナンスは、日常の中で行っているものです。
しかし、文書の管理は年度を単位として行っているため、年度末には、新しい年度の準備や、旧年度文書の整理といった、年度の切替えに伴う作業が発生します。

 

1 年度末・年度始めの作業の意義
年度末・年度始めには、保存期間の満了による廃棄や保存期間の延長、紙の文書の場合には保存場所の移動など、その文書の扱いに変更があります。
年度末・年度始めの時期には、業務の繁忙期や担当者の異動などがあり、文書事務の作業がおろそかにされがちですが、これらの変更を正確に管理しておかないと、新年度の事務に支障を来すとともに適正な文書管理を行うことができなくなります。

 

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2 年度末・年度始めの作業の流れ
年度末・年度始めには、原則として次の流れで作業を行います。
具体的な作業については、各論でご紹介します。

 

(1) 新年度に向けての準備(新年度文書が発生する前に行います。)
ア 分類基準表の見直し
・内容の見直し、確認
・文書管理責任者(各課長)による決定
・統括文書管理責任者(総務課長)への提出
イ 文書管理システムへの新年度分文書分類・フォルダ情報の登録
ウ 新年度用ファイル用品の整備
・ファイル用品の請求
・フォルダラベルの印刷、貼付
・個人情報、秘密情報の含まれるフォルダへのシール貼付

 

(2) 前年度以前文書の整理(処理途中の文書がなくなったら、速やかに行います。)
  ア キャビネットの下段にある紙文書の仕分け(引継ぎ、移し替え、廃棄、保存期間の延長)
・保存期間が満了する文書を確認し、延長の必要がない文書については、廃棄するものとしてまとめておく。
・それ以外の文書については、年度別、保存期間別に保存箱に詰め、引継ぎ又は移し替えの準備をする。
イ キャビネットの上段にある紙文書の移動、整理(置き換え、常用指定、廃棄)
 ・保存期間が0年の文書を確認し、延長の必要がない文書については、廃棄するものとしてまとめておく。
・文書が発生しなかったフォルダについては、後から削除するためにまとめておく。
ウ 保存期間が満了する電子文書の確認(廃棄、保存期間の延長)
エ 保存の措置予定、保存期間満了時の措置予定の登録
・ア、イ、ウにより確認した移動の予定を、文書管理システムに登録する。
・予定について文書管理責任者の決定を受ける。
オ 実際の引継ぎや廃棄等の処理

 

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3 文書の所属換え
行政文書は、行政文書ファイルを単位として、係ごとに保存しています。
文書をどの係が保存管理するかは、組織規則や職務権限規定等で定める事務分掌で決まります。
したがって、組織改正に伴い組織がなくなる場合や、所掌する事務に変更がある場合は、過去に発生した文書についても、文書の管理組織を変更しなければなりません。
自治体が保有している文書について、管理組織がどこもないということはありえないからです。

 

4 年度末・年度始めの作業を行う権限
分類やフォルダの整備は、係内での統一性が保たれるよう、あらかじめ指定した文書取扱責任者と文書担当者だけが行うことができます。
ただし、分類やフォルダの内容については、各事業の担当者が最も把握しているはずです。
したがって、文書担当者は、分類基準表の見直しや新年度フォルダの作成、廃棄等に当たっては、各事業の担当者と相談して適切に行う必要があります。

 

年度末・年度始めにおける文書事務の注意点

人事異動があった場合、人事異動の前と後とで権限が異なります。
日付を遡ったりして処理を行うような場合には、十分注意します。
しかし、先付けの日付や遡った日付で起案・決定をするのは、例外的な場合です。
自治体の意思決定をいつ行ったのかという記録は適正に管理されなければなりませんので、安易にこういった処理を行うことは、自治体の文書管理に対する信頼を損ねることになります。

 

また、先付けの日付や遡った日付で起案・決定をしたとしても、文書管理システムではその処理を本当に行った日付を記録しています。
したがって、日付を変更して処理を行った理由を、必ず対外的に説明できるようにしておく必要があります。

 

1 新年度(4月1日以降)の文書を作成する場合
起案文書は、発生した日が属する年度の文書として扱うのが原則です。
また、起案日は「意思決定の案を作成した日」ですので、通常は、実際に意思決定の案を作成する日よりも後の日付で起案することはありません。
決定についても、3月中に4月1日以降の日付で行うことはできません。

 

しかし、4月1日付けで起案すべき文書が大量にあり、実際に4月1日になってから起案をするのでは間に合わない場合には、次の手順で起案の準備を行っておきます。
これはあくまで準備を行うだけですので、実際に決定権者に文書を回付するのは、4月1日以降にします。

 

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(1) 3月31日以前に、4月1日以降の日付で起案文書を作成する必要がある場合
新年度の事業に関することであっても、意思決定を3月31日以前に行うことは可能です。
新年度の事業に関する場合、新年度の日付で施行する場合であっても、起案・決定自体は3月31日以前に行ってかまいません。
前年度中に4月1日付けの起案を準備することは後述(2)のとおり可能ですが、本当に4月1日付けで起案する必要があるのかは再確認してください。

 

ア 新年度予算の資金前渡経理に必要な事業等実施原議の起案について
財務会計事務の特例措置により、新年度予算の支出命令書等を4月1日付けで作成する場合であっても、事業等実施原議は、3月中に起案することができます。
支出決定原議、兼命令書の根拠文書として事業等実施原議が必要な場合でも、3月31日以前の日付で起案することができます。
イ 支出決定原議の起案について
支出決定原議等、その年度の予算が配当されなければ起案することができないような文書については、予算が配当された後の日付で起案する必要があります。

 

(2) 3月31日以前に、4月1日以降の日付で起案する方法
4月1日以降の日付で起案する文書を準備する場合には、次の方法で行います。

 

ア 起案日の変更
文書管理システムを使用して起案文書を作成する場合には、ログイン後に基準日を4月1日以降に変更します。
単に、起案画面で「起案日」を変更しただけでは権限の変更には対応できませんので注意してください。

 

イ 一時保存
3月中にできるのは、起案の準備だけです。
4月1日以降の人事情報が確定しないうちに起案を実行してしまうと、起案者や決定者・決定関与者に異動があった場合に、起案しなおさなければならなくなってしまいます。
起案の準備をしたら、一時保存をしておきます。
一時保存を一度行ってしまうと、後から基準日の変更はできなくなってしまいます。
4月1日付けで起案する必要がある場合には、必ず、始めから基準日を4月1日にして作成してください。

 

ウ 起案者
3月中に起案の準備をしているときに起案者となっていたものが、4月1日で異動した場合には、その起案は有効でなくなります。
ア、イにより準備して一時保存中の起案文書において、起案者となっている職員が異動した場合には、異動後に、起案者を係内の別な人(異動のなかった人)に変更します。
起案を行うのは、係内の誰であっても同じです。

 

エ 回議ルート
基準日を変更すると、変更した4月1日以降の時点での権限者が表示されます。
しかし、人事異動の内示が出るまでは、異動後の権限情報は反映されていません。
人事異動の内示前に上記ア、イにより起案文書を準備していたとしても、内示により異動が明らかになれば、回議ルートを修正する必要があります。

 

オ 保存情報
基準日を変更することにより、保存情報設定時に選択するフォルダ等は、その基準日時点のものとなりますが、新年度の分類・フォルダが整備されていないと起案することができません。

 

2 新年度になってから前年度(3月31日以前)の日付で起案する場合
文書管理規則等で定めがあれば、緊急の場合については、起案文書によらないで事案の決定をし、当該決定後に起案文書を作成することができます。
したがって、この規定にあてはまる場合には、新年度になってから、前年度(3月31日以前)の日付で起案文書を作成し、前年度の日付で決定したものとすることができます。
ただし、これはあくまでも例外的措置であり、本来、前年度の起案は前年度中に、そして承認・決定は承認・決定者の異動前に済ませておくのが原則です。

 

(1) 起案の方法
文書管理システムを利用して起案する場合には、ログイン後に基準日を3月31日以前に変更します。
これにより、基準日時点の組織・所属で起案を行うことができます。
4月1日に異動してきた職員は、前年度の起案を行うことはできません。

 

(2) 決定の方法
3月31日までに承認・決定が完了しなかった場合は、起案と同様、基準日を3月31日以前に変更することにより、基準日時点の組織・所属で承認・決定を行うことができます。
決定者が基準日を切り替えるのは、権限の切替を行うためです。
決定日を3月31日以前として残すためには、基準日を切り替えて決定を行うだけでなく、浄書時において起案者が決定日を変更する必要があります。

 

(3) その他
回議ルートに含まれる職員が、異動ではなく、退職や市外の組織への転出をしたため、文書管理システムのユーザーではなくなった場合には、文書係に相談する必要があります。

 

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