「はじめて」は、意味によって「初めて」と「始めて」を書き分けます。公用文では、副詞の「はじめて」は平仮名にせず「初めて」と漢字で書きます。結論は次のとおりです。
初めて(副詞)……「最初に」「それまで一度もなかったことが」の意味。
例:本市で初めての取組/説明を聞いて初めて分かった
始めて(動詞「始める」)……「開始して」の意味。
例:受付を始めてから1週間/仕事を始めて3年になる
この記事では、迷ったときの見分け方、名詞の「初め」「始め」、「○○をはじめ」の書き方を、国の基準を根拠に説明します。
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| 書き方 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 初めて (副詞) |
最初に・それまでなかったことが | 初めての経験 初めて利用する方 |
| 始めて (動詞) |
「始める」の形。開始して | 受付を始めて1週間 準備を始めてください |
| 初め (名詞) |
ある期間の早い段階・最初 | 年の初め、秋の初め 初めからやり直す |
| 始め (名詞) |
物事を始めること・物事の起こり | 仕事始め、御用始め 手始め、始めと終わり |
「初」は時間や順番の最初、「始」は物事の開始と覚えると区別しやすくなります。
迷ったら、次のように確かめてください。
1 前に「~を」があり、「~を開始して」と言い換えられる → 始めて
2 「最初に」「生まれて一度目に」「そのとき(になって)やっと」と言い換えられる → 初めて
【見分け方の例】
本市として(はじめて)の試みです。
→「最初の」なので初めて
工事を(はじめて)から3か月がたちました。
→「工事を開始して」なので始めて
申請書が届いて(はじめて)審査を開始します。
→「届いてから、そこでやっと」なので初めて
4月から相談窓口を(はじめて)、利用者が増えました。
→「窓口を開始して」なので始めて
「初めて」は、それまでに一度もなかったことが起きることや、ある時点になってやっとそうなることを表す副詞です。
公用文では、副詞は原則として漢字で書きます。内閣訓令「公用文における漢字使用等について」は、漢字で書く副詞の例として「初めて」を挙げています。また、常用漢字表にも「初めて〔副〕」(〔副〕は副詞の印)が載っています。そのため、公用文では「はじめて」と平仮名にせず、「初めて」と書きます。
【例文】
本市で初めての取組です。
初めて利用する方は、事前に登録してください。
制度が始まって初めての申請受付となります。
申請書が届いて初めて審査を開始します。
あいさつの「はじめまして」も、意味は「初めてお目に掛かります」なので、漢字で書くなら「初めまして」です。
なお、「公用文作成の考え方」では、一般向けの解説や広報では、読みやすさを優先して、一部の副詞を仮名で書くこともあるとしています。
「始めて」は、動詞「始める」(開始する)に「て」が付いた形です。副詞ではないので、「初めて」とは役割がまったく違います。
【例文】
4月から相談窓口を始めて、利用者が増えました。
受付を始めてから1週間で、100件の申請がありました。
会議の資料作りを始めてください。
この事業を始めて5年になります。
「書き始める」「読み始める」のように、ほかの動詞に付く場合も「始」を使います。常用漢字表で「初」には「はじめる」という読みがないので、動詞なら必ず「始」です(「書き初め」の「初」は、別の読み方「そめる」です)。
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名詞の「はじめ」は、「初め」「始め」の両方があります。国の「『異字同訓』の漢字の使い分け例」(平成26年 文化審議会国語分科会)では、次のように示されています。
初め・初めて……ある期間の早い段階。最初。先の方のもの。
例:初めはこう思った。秋の初め。年の初め。初めて聞いた話。初めからやり直す。
始まる・始め・始める……開始する。始めたばかりの段階。物事の起こり。主たるもの。
例:懇親会が始まる。書き始める。手始め。仕事始め。始めと終わり。国の始め。
仕事でよく使う言葉に当てはめると、次のようになります。
| 言葉 | 書き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 年の( )・月の( ) | 初め | 期間の早い段階 |
| ( )に(文書の最初の見出し) | 初めに | 最初に |
| 仕事( )・御用( ) | 始め | 仕事を始めること |
| 手( ) | 手始め | 物事の始まり |
| ○○を( )、~ | 始め(仮名も多い) | 主たるもの(次の見出しで説明) |
「年度初め」と「年度始め」については、「年度始め、年度初め」はどっちが正しいかで説明しています。
「校長をはじめ、教職員一同」「東京都をはじめ多くの府県」のように、多くの中で主なものを挙げる「はじめ」は、迷いやすい言葉です。
「『異字同訓』の漢字の使い分け例」では、「校長を始め,教職員一同……」と「始」の例を示したうえで、「現在の表記実態としては,仮名で書かれることも多い」と注を付けています。実際、「公用文作成の考え方」の本文でも「法令をはじめ」と平仮名で書かれています。
漢字で書くなら「始め」(「初め」にはしない)
平仮名の「はじめ」も広く使われている
→ 職場の用字例に従い、文書の中でそろえる
1 常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)
・「初」の読み「はじめ」「はじめて」。例は「初め」「初めて〔副〕」。
・「始」の読み「はじめる」「はじまる」。例は「始める」「始め」「始まる」「始まり」。
2 内閣訓令「公用文における漢字使用等について」(平成22年内閣訓令第1号)
・副詞は、原則として漢字で書く。例の中に「初めて」がある。
3 「異字同訓」の漢字の使い分け例(平成26年 文化審議会国語分科会)
・「初め・初めて」と「始まる・始め・始める」の使い分けの例(上の名詞の「初め」と「始め」を参照)。
原文は、文化庁の「常用漢字表」(PDF)と「『異字同訓』の漢字の使い分け例」(PDF)で確認できます。
Q 「はじめて」を平仮名で書くのは間違いですか。
A 一般の文章では間違いではありません。ただし公用文では、副詞は原則として漢字で書くため「初めて」とします。読みやすさを優先する広報文などでは、平仮名にすることもあります。
Q 「始めての経験」は間違いですか。
A 間違いです。「それまで一度もなかった」という意味なので「初めての経験」です。「始めて」は「~を始めて」の形で、開始する意味のときだけ使います。
Q 文書の最初の見出しは「初めに」「始めに」「はじめに」のどれですか。
A 意味は「最初に」なので、漢字なら「初めに」です。見出しでは平仮名の「はじめに」もよく使われます。
・「最初に・それまでなかった」→ 初めて(公用文では平仮名にしない)
・「~を開始して」→ 始めて
・名詞は、期間の早い段階なら初め、物事を始めることなら始め
・「○○をはじめ」は、漢字なら始め。平仮名も多い
そのほかの漢字と平仮名の使い分けは、「など、等」「ため、為」「さらに、更に」など漢字とひらがなの使い分け方もご覧ください。
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