公文書の電子化とは?電子決裁のメリットとデメリットも併せて解説

公文書の電子化とは?電子決裁のメリットとデメリットも併せて解説

公文書の電子化とは?電子決裁のメリットとデメリットも併せて解説

文書の電子化とは

受領した紙の文書を収受する場合には、光学式読取装置(以下「スキャナ」といいます。)を利用して電子化した電磁的記録(以下「電子化文書」といいます。)を文書管理システムに登録することができます。
文書管理システムは、紙文書のままでも所在管理をすることはできますが、電子化することにより、文書管理システムにより内容の確認もでき、また、庁内の情報共有も円滑に行われるようになります。
これまで紙で管理していた文書についても、できるだけ電子化を行い、効率的に管理するようにしましょう。
ただし、電子化文書の扱いに関しては、まだ裁判例の蓄積等が十分ではないため、電子化については以下の点に注意する必要があります。

 

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スキャナによる紙文書の電子化と原本の保存における法的な課題の検討

紙文書をスキャナにより電子化した電子文書(以下「電子化文書」といいます。)を利用することには次の二つの課題がありますが、次のように整理しています。
利用のために電子化を行うことと、その元の紙文書を廃棄するということは別です。
その文書の性格や業務の流れを考え、適切に判断する必要があります。

 

1 電子化後の紙文書の扱い
(課題)
紙文書をスキャナで読み取り電子化した後に、それを紙文書に代えて保存することが許されるか?
(回答)
文書の保存については地方自治法第149条第8号により首長が担任すべきものとされていますが、どのような形で保存するかについては、行政手続に係るものを除き、一般的な法の規制はありません。
すなわち、電子化し、それを利用することや、元の紙文書を廃棄することは、それを容認する自治体の規定が存在すれば、法制度上は問題がありません。
ただし、電子化文書が訴訟等で証拠として認められるかは別の問題です。
訴訟等でその真正性に疑義が生じたときに、裁判例の蓄積がない現在では電子化文書は証拠として認められない可能性があります。
したがって、紙文書を電子化したとしても、法的な争いが生じる可能性があるような文書については、元の紙文書は廃棄すべきではありません。
逆に言えば、法的な争いが生じる可能性のない文書(写しの保管で足りる文書)については、電子化した後は紙文書を廃棄してもいいのです。

 

2 意思決定における電子化文書の扱い
(課題)
意思決定を行うに当たり、住民からの申請書等の紙文書自体を参照するのではなく、スキャンした電子文書を参照することが許されるか?
(回答)
電子化文書を原本として管理できるかという問題と、電子化文書を添付して、起案・決定を行うことができるかは別の問題です。
元の紙文書と電子化文書が同一の意識内容を保有していれば、承認・決定権者が電子化文書を確認して、意思決定を行えるといえます。
「コピー」文書が、元の紙文書と同一の意識内容を有していることについては最高裁の判例が出ています。
現在の技術的な進歩により、一定の要件を満たしてスキャナにより電子化された文書は、元の紙文書と同一の意識内容を保有しており、それを見て意思決定を行うことは何ら問題ないものと考えられます。
したがって、紙の原本を保存しなければならない場合であっても、意思決定は電子化文書だけを見て行うことができます。
どういう場合に電子化文書が元の紙文書と同一の意識内容を有していると認められるかは、後述します。

 

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電子化の運用

スキャナによる電子化をするメリットがあるかどうかは、文書の性質やその後の利用方法によっても異なるため、電子化するかどうかを画一的な基準で判断することはできません。
下記に示すのは基本的な考え方ですので、業務の性質により検討を行う必要があります。
ただし、紙文書を扱っていたときとまったく同じ流れで業務を行うことを前提に検討を行っても意味はありません。
電子的に文書を扱えることを前提に業務の流れを見直したうえで、電子化するかどうかを検討する必要があります

 

1 基本的なルール
基本的に20枚程度の紙文書であれば、スキャナにより電子化をし、収受登録又は資料登録の際に添付文書として文書管理システムに登録します。
電子化を行うのは、「電子決裁を行うため」だけではなく、その後の保存管理のためでもあることに注意する必要があります。
※ 20枚というのはあくまで目安です。下記のようなメリットがない文書については、あえてスキャナにより電子化する必要はありません(収受登録後に供覧したら、二度と見ない文書等)。
紙文書のまま処理してください。
逆に20枚を超える文書についても、下記のメリットが大きい文書であれば、電子化して処理をしてください。
電子化するメリットがあるかどうかは、各係において、業務内容に応じて判断します。
また、高性能のスキャナであれば、20枚以上のものでもそれほど時間がかかりません。

 

2 電子化によるメリット
(1) 電子決裁、電子供覧の利用の促進
文書管理システムでは、紙の添付文書がある場合でも電子決裁を行っていますが、当然、紙の添付文書がない方が効率的に管理をすることができます。
特に、出先機関と本庁との間のやり取りを効率化するためには、電子的に処理することが有効です。
起案や供覧のために添付するのは、「写し」である電子化文書でもかまいません。
(2) 検索性の向上
紙文書を電子化して、文書管理システムに登録しておけば、検索機能を利用することにより、すぐに文書の内容を見ることができるため、利便性が向上します。
これは、紙の原本を保存する必要がある場合でも同様です。
職員が日常業務で内容を確認するのは、必ずしも原本でなくてもいいからです。
(3) 情報共有の促進
複数の部署に情報提供したい場合などにおいて、紙文書しかないときには、コピーを文書交換便等により送付しなければなりません。
しかし、電子化することにより、文書管理システムの供覧機能やグループウェアのメール、電子掲示板、共用キャビネット等を利用して、庁内の情報共有を効率的に行うことができます。

 

(4) 所在管理の効率化
紙文書を管理する場合には、その所在を管理しなければなりません。
長期保存においてその所在場所を正確に管理するのは、とても大変なことであり、持出し等による紛失も少なくありません。
電子的に管理する場合には、所在管理が必要ありませんので、保存管理を効率化・適正化することができます。

 

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3 電子化における注意
紙の原本と同一の意識内容を保有しているといえるためには、解像度・階調において次の要件が必要です。
(1) 解像度:200dpi以上
(2) 階調:RGB各256階調以上
通常の文書であれば、この程度の解像度で十分きれいに読み取り、ディスプレイでも視認することができます。
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(令和16年法律第149号。以下「e-文書法」といいます。)においても、この要件で認められていますので、これ以上の解像度に設定する必要は基本的にありません。
利用者は、変更は行わないものとします。
解像度を必要以上に高くすると、ファイルの容量が増大し、保存や処理に支障が生じます。

 

4 電子化の対象となった紙文書の保管
上記の基準に従って電子化した文書ですが、この電子化の元となった紙文書を廃棄していいかどうかは、上で述べたとおり、また別の問題です。
スキャナにより電子化した電子文書は、あくまでも「写し」として扱いますが、統括文書管理責任者が別に定める文書については、電子化の対象となった到達文書を廃棄し、電子化文書を到達文書として扱います。
紙文書を廃棄していいかどうかは、次の基準により判断します。

 

(1) 原本(紙文書)を保存しなければならない場合
後日、法的な争いがあった場合に証拠として示す必要のある文書の場合は、スキャナで読み取って電子化し、それを文書管理システムに登録したとしても、原本である紙文書を廃棄することはできません。
定められた保存期間、保管しておく必要があります。
例)
ア 住民や企業からの申請書、届出書等
イ 契約の相手方から提出された財務関係書類(契約書、請求書、納品書等)
ウ 他の自治体や国から送付されてきた公文書(公印が押されているもの)
エ 上記アからウ以外で、住民や企業の権利義務の得喪に関する文書(協定書、覚書等)
カ 上記アからオ以外で署名・押印のある文書

 

(2) 原本(紙文書)を廃棄してもいい場合
上記のように法的な証拠書類として保管しておかなければならない文書ではなく、単なる事務連絡や資料的な価値しかない文書については、スキャナにより電子化したら、元の紙文書は随時廃棄してかまいません。
公印のない通知文書など、FAXでの送受信ができる文書というのは、写しの保存でかまわない文書、つまり原本を廃棄してもいい文書です。

 

5 電子化文書の保管
(1) 文書管理システムに登録して管理する場合
電子化文書を文書管理システムに登録した場合には、ユーザーはファイルサーバ等から速やかに削除します。
不要になった電子化文書を放置しておくと、ファイルサーバの容量を圧迫することになります。

 

(2) 文書管理システムに登録せずに管理する場合
ファイルサーバ等で保存する場合においても、必要に応じて圧縮等の処理を行い、不要時には速やかに削除します。

 

6 「電子化」よりも「はじめから電子文書」
紙を電子化することによるメリットやルールは上記に挙げたとおりですが、これは「紙で受領しなければいけない場合」の方法であり、もっとも効率的なのは、はじめから電子文書で作成、受領することです。
現在、職員が作成する文書のほとんどは、電子的に作成されています。
また、庁内でのやり取りは、文書管理システムやグループウェアの各機能を使用して電子的に行うことができます。
それにもかかわらず、電子的に作成した文書を、紙に印刷して送付(FAXを含む。)して、それを受け取った側がスキャナで電子化するなどというのは、とても非効率です。
庁内での情報共有を効率的に行うためにも、他部署への通知や連絡はできる限り電子文書で行うようにしましょう。

 

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