公用文で特に書き間違えが多いのが、「~にあたり、~に当たり」を漢字で書くか平仮名で書くかです。
結論から言うと、正しくは「~に当たり」と漢字で書きます。
また、送り仮名も「当たり」が正しく、「当り」と省略できません。
例文
新プロジェクトの開始に当たり、関係者全員に説明会を実施した。
退職に当たり、これまでお世話になった皆様に感謝の意を表します。
留学に当たり、必要な手続きを事前に済ませておく必要がある。
スポンサードリンク
「~に当たり」は、附属語的で平仮名で書いてしまいがちですが、動詞なので漢字で書くのが正しくなります。
公用文では動詞は漢字で書くのが原則です。
また、「当たり」「当り」の送り仮名でいうと、個別の漢字の送り仮名は、「常用漢字表」の「例」の欄を見れば分かる仕組みになっています。
複合の語など、判断に迷う場合も、「公用文における漢字使用等について」(平成22年11月30日内閣訓令第1号)、「送り仮名の付け方」(昭和48年6月18日内閣告示第2号)がそれぞれ手引となってくれます。
そこで「常用漢字表」を確認すると、
あたり・・・当たり
と送ることが分かります。
ちなみに、一方、上記「送り仮名の付け方(通則1、通則2)」では以下のようにも述べられています。
通則1 許容
次の語は,( )の中に示すように,活用語尾の前の音節から送ることができる。
表す(表わす) 著す(著わす) 現れる(現われる) 行う(行なう) 断る(断わる) 賜る(賜わる)
通則2 許容
読み間違えるおそれのない場合は,活用語尾以外の部分について,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。
〔例〕
浮かぶ〔浮ぶ〕 生まれる〔生れる〕 押さえる〔押える〕
捕らえる〔捕える〕 晴れやかだ〔晴やかだ〕
積もる〔積る〕 聞こえる〔聞える〕
起こる〔起る〕 落とす〔落す〕 暮らす〔暮す〕 当たる〔当る〕
終わる〔終る〕 変わる〔変る〕
そのため、一般的な用法であれば、「当り」も読み間違えるおそれはないため、許容された表現だといえます。
しかし公用文においては、「送り仮名の付け方」の「許容」は以下の表のとおり適用することとしています。
公用文における「送り仮名の付け方」の適用一覧
本則 | 例外 | 許容 | |||
---|---|---|---|---|---|
単独語 |
活用のある語 | 通則1 | ○ | ○ | × |
通則2 | ○ | ー | × | ||
活用のない語 | 通則3 | ○ | ○ | ー | |
通則4 | ○ | ○ | × | ||
通則5 | ○ | ○ | ー | ||
複合語 | 通則6 | ○ | ー | ○ | |
通則7 | ○ | ー | ー |
表を見ると分かるとおり、公用文においては通則2の「許容」(1文字多く振ること)及び通則2の「許容」(1文字少なく振ること)は認められていません。
結論として、公用文においては、「あたり」は「当たり」、という送り仮名以外は認められません。
スポンサードリンク